気持ちの張り詰めた記者会見場、ミックスゾーンでは聞けないあの人のホンネ。フリーアナウンサー有働文子さんが聞き役をつとめ、監督・選手にインタビューする「VOICE」。第1回のゲストは埼玉パナソニックワイルドナイツのスクラムハーフ・小山大輝選手だ。
頂点まであと一步に迫ったリーグワン2025-26のシーズン終了から約2ヶ月。双子のパパとして慌ただしいオフを過ごしていた合間を縫って取材に対応してもらった。プライベートのことから、自身のプレー、“社員選手”への想いまで語ってもらった(取材日:7月29日)。
※本記事はPodcastを再編集したものです
双子のパパ、初めてのオフ
シーズン終了からおよそ2ヶ月が経とうとしていますが、今はどんなふうに過ごしていますか?
実はシーズン中に双子が生まれました。
忙しくて外出はなかなかできていないんですけど、明日からちょうど家族で北海道に帰省するところです。
双子は大変ですね。どっちかが泣いたら、もう片方も泣いちゃうんで(笑)。

それは大変そう…奥さまと育児の分担はどうしていたんでしょう。
シーズン中は僕が夜寝かせてもらって、奥さんが1人で見てくれていました。本当にすごくありがたかったです。
代わりにオフは、僕ができる限りのことはやろうと思っています。
頂点まであと一歩。足りなかったのは「熱さ」
2025-26シーズンは、頂点まであと一歩という結果になりました(※PO準決勝でクボタスピアーズ船橋・東京ベイに24-26で惜敗)。
優勝に足りなかったものはどんなところだと感じていますか?
戦術面とか技術面では、シーズン通して満足いく出来でした。ただ、プレーオフのところで「熱さ」が、もうひとつ足りなかったのかなと。
技術とか状況判断ももちろん大事なんですが、それ以上に「勝ちたい、勝ちたい」という熱量。そこをもっと強くしないといけないなと思っています。
個人としては、怪我もあったシーズンでした。
今シーズンは半分くらいしか出られなくて。
でも、自分を見つめ直す時間にもなりましたし、後輩たちが頑張ってくれたので、苦しくも良いシーズンでした。
積み重ねた100キャップ、ターニングポイントは
小山選手はチーム通算100キャップも達成しましたが、入団から過去9シーズンを振り返って、一番印象深いシーズンはいつですか?
当時はトップリーグでしたけど、W杯イヤーの2019年シーズンですね。
あのシーズンから、リザーブでほぼ全試合出させてもらって、試合のたびにいいパフォーマンスができるようになって成長できるようになりました。試合を経験することが一番大事だなと思っています。
やっぱり、練習だけでは得られないものが試合にはあるということですね。当時は同じポジションに代表クラスの選手が在籍していました。影響を受けたところはありますか?
ウッチーさん(内田啓介氏)は、フィジカルの部分もそうですし、パス・キックの精度もすごくて。その部分を一緒に練習しながら教えてもらったり、盗めたんじゃないかと。
でも自分の得意分野、アグレッシブさでは絶対負けたくないと思っていました。お互いにいい持ち味があって、いいコンビを組めていたと思います。
最初はなかなか試合に出られない時期もあったと思います。モチベーションはどう保っていたんですか?
モチベーションの前に「まず自分が成長しないといけないな」って。大学までは戦術とかをあまり理解してこなかったので、最初はもう勉強、勉強、勉強。ワイルドナイツのラグビー、ラグビーの構造を理解するところからでした。
大学時代は結構好き勝手やっていたんです(笑)。戦術というより感覚でやっている部分が多かった。プロの世界に入って、そこが一番苦労しました。
ちなみに、ワイルドナイツを選んだ理由は?
偉大なSHの先輩がいて、「ここなら成長できるチャンスがある」と思ったのが一番です。結果的に出場機会ももらって、その選択は間違っていなかったと思います。
「昔は結構バチバチだった」からの変化
今は同じポジションに本堂(杏虎)選手、萩原(周)選手がいますね。どんなことを伝えていますか。
特別なことはないんですけど、自分の強みをどんどん伸ばしてほしいと。チームの共通認識のところは、ハーフみんなで話したりしています。
仲はめっちゃいいですよ。今はすごくいい雰囲気で練習できています。誰が出てもいいラグビーができるように教え合っています。
昔は違った…?
自分が入団した頃は、チーム内が結構バチバチだったんで(笑)。もちろんいい意味でのバチバチですよ。
どっちがいいのかは分からないですけど、今はライバルでありながら、分からない人には教えるし、チームとして教え合える環境なのはすごくいいなと。

金沢HCからの宿題は…来季はもっとアグレッシブに!
小山選手はボールの捌きの緩急、トライをとる嗅覚がすごいなって思いますが、ご自身の強みはいかがですか?
アタックのところもそうなんですけど、ゲームコントロールと、ディフェンスですね。ディフェンスは高校時代からずっと自分の一番の強みで、そこはもっと伸ばしていきたい。
アタックでは、チャンスがあればランで自分から仕掛けていくところも意識していきたいです。
ロビー(ディーンズ)さんから昨シーズンに金沢(篤)さんにHCが代わりました。どんなアドバイスがあったんですか?
金沢さんからは「もっとアタックのアグレッシブさが欲しい」と言われました。来シーズンは自分から仕掛けていく、自分がアタックのオプションになれるよう意識していきたいです。
振り返ると、ゲームコントロールを意識しすぎて、自分の前が空いているスペースを見逃しちゃっている場面が多かったですね。その部分を金沢さんとの1on1で毎回言われていました。
スクラムハーフって、試合中ずっとボールを捌き続けますよね。その中での感情の起伏はあるものですか。
内心「キツイな」「あー遠くの方にラックできちゃった」と思いながら捌いてます(笑)。
スクラムハーフの感情の起伏があるとあまり良くないと思うので、できる限り冷静であることは意識しています。そしてSOを初め周りを見ること・声を聞くことを考えていますね。

今も昔もアーロン・スミスは憧れ
憧れの選手、いまも変わらずアーロン・スミス選手でしょうか。
そうですね。ずっと変わらないです。アーロン・スミスとのマッチアップはいつも楽しみです。パスも、自分で仕掛けるところ、キックの精度、そういうところは見習っていきたいですね。
人間的にも尊敬できます。若手の時、ハイランダーズに1ヶ月留学させてもらったことがあって、ずっと練習に付き合ってくれたんです。
あっちはシーズン中だったんですけど、練習にも一緒に参加させてもらって。憧れの選手のプレーを間近でずっと見られたのは、自分の成長の大きなひとつだったかなと思います。
ひょっとしてオフも一緒に?
そういうことはなかったんですけど、チームディナーは一緒に食べさせてもらいました。日本人選手にはいつも「シャチョウサン、シャチョウサン」って言ってましたね。多分フミさん(田中史朗氏)から教えてもらった言葉なんですけど(笑)。
金沢HCの1年目と、ロビーさんの教え
HCの話に戻ると、昨シーズンはロビーさんから金沢さんに代わって最初のシーズンでした。
ラグビー自体は、ロビーさんの時から全然変わらないと思います。
ただ、金沢さんは選手への「落とし込み」がすごくうまいなと思っていて。戦術も分かりやすく、明確に言ってくれるので、すごくやりやすかったです。昨シーズンは選手も入れ替わりましたけど、その中でも、みんなができるように落とし込んでくれました。
ロビーさんのラグビーをベースにしながら、金沢さんの考えも少しずつ入れて、いい方向に進んでいるのかなと思います。
逆に、ロビーさん時代はいかがでしたか。
ロビーさんも金沢さんと同じく、自分にアグレッシブさを求めていたと思います。
ロビーさんは怒ったりするんですか?
すぐ怒るタイプではないんですけど、中途半端なプレーに対しては厳しかったですね。
いつもにこやかなイメージかもしれませんが…やっぱりHCは締める時は締めないといけない部分があるので。
「プロにはならない」。朝6時からトレーニングする理由
小山選手は、プロ選手になろうと思ったことが全くないそうですね。
そうですね。入団1年目からずっと、プロになるという考えはなかったです。やっぱり引退した後の人生の方が長いじゃないですか。セカンドキャリアを考えて、という理由です。
最近は本当にプロの選手が増えてきたので、ちょっと寂しさもあるんですけど。まあ、どっちがいいという話ではなくて、お互いに良さがあると思います。
やっぱり社業とラグビーの兼ね合いは大変じゃないですか?
オフシーズンは特にそうですね。プロ選手はずっと休みで、練習できて、旅行にも行けますが、社員選手はオフになると会社に行って、仕事を勉強させてもらう時間があるので。そうした部分ではちょっと差はあります。
でも、それを言い訳にはしたくないんです。社員選手は、朝6時くらいから出社前にトレーニングをして、それから会社に行くんです。大変ですけど、やりがいを感じていますし、いい方向に頑張れているかなと思います。
31歳。「できる限り現役でプレーしたい」
現在31歳。ラグビー選手としての今後のキャリアは考えていますか?

考えないといけない年齢ではあるんですけど、できる限り現役でプレーしたいという思いです。
20代の頃と比べて、体の変化は感じないわけではないです。試合の次の日、疲労が抜けなくなってきました。
でも、プレーに関してはまだまだできる自信がありますし、逆に年齢を重ねて経験も知識も増えてきています。
ラグビーは高校(北海道芦別高校)から始めていますね。
正確に言うと、中学3年生で野球部を引退した後からですが、ほぼ高校からですね。きっかけは兄の影響です。
野球からラグビーへ。最初抵抗はなかったですか?
兄の試合を見に行った時、人間と人間が本気でぶつかり合うのを初めて見て、びっくりしました。
ただ、いざタックル入ってみても、意外と怖さとかはなかったですね。ずっと兄の姿を見ていたからだと思います。
ここまで続けると思っていましたか?
思っていなかったですね。ラグビーで大学に行くことも、トップのチームに行けることも。
でも、高校に入ってから、上を目指したいという気持はありました。
大学に行けて、ワイルドナイツに来られたことは本当に嬉しかったです。ラグビーが今までの人生の道を広げてくれた。感謝したいと思います。
子どもたちへ、そしてファンへ
今ラグビーをしている子どもたちに伝えたいことはありますか?
今は、ラグビーを楽しんでほしいですね。ボールを持って走る、キックする、トライする。1つ1つのプレーを楽しんでやってみてほしいです。
ちなみに小山選手は、ラグビー辞めたいと思ったことはあったんでしょうか。
ラグビー人生で1回もないです。苦しい時もありましたけど、「試合に出る」ことがすごくモチベーションになっていたので。振り返ると、楽しむメンタリティでラグビー人生を送れているのかなと思います。
ラグビー人口は減っています。競技人口やファンを増やすには、どうしたらいいと思いますか?
自分の出身校も部員が減って合同チームになっています。
まずは、ラグビーに触れてもらうことがすごく大事だと思います。試合を1回見に来てほしいですね。見てもらう機会を作っていただいて、ラグビーにハマってもらう。
そして自分たちはハマってもらうためにいいプレーをする。子どもたちやファンに楽しんでもらえるようにやっていけたらなと。
熊谷は練習も公開されていて、選手が身近ですよね。
そうですね。普段からサインや写真も、みんな対応しています。練習の日は特にチャンスだと思うので、皆さんぜひいらしていただければと思います。
最後に、このポッドキャストを聞いてくださっている方にメッセージをお願いします。
今シーズンは8月24日から練習がスタートします。今シーズンこそ優勝できるように、練習から頑張りますので、ぜひ練習も試合も見に来てください。選手が頑張っているところを見ていただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします!
小山大輝選手でした。ありがとうございました!

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