リーグワン2022-23プレーオフ準決勝の第一戦。レギュラーシーズン1位で連覇を狙う"王者"埼玉パナソニックワイルドナイツに、同4位で準決勝初進出となった横浜キヤノンイーグルスが渾身のチャレンジ。
序盤はイーグルスペース、連続トライに湧く
試合の序盤はイーグルスのペース。二人がかりのダブルタックルで相手の前進を確実に止め、王者にプレッシャーをかけます。
攻めても少ないチャンスを確実にモノにして、14分にラインアウトから先制のモールトライ。その5分後には、SHファフ・デクラークが相手の虚をつく好判断で、WTBイノケ・ブルアのトライをアシスト。この日の秩父宮、体感的には赤のイーグルスファンが優勢でスタジアムが湧きます。
しかし、王者もじわじわと忍び寄る。SO松田力也が正確なキックで3点を積み重ね、3連続ゴール。
その後両チーム1本ずつ決めて15-17、イーグルスリードで前半を折り返します。
王者がイーグルスのDFに穴を開け、畳み掛けた
ターニングポイントとなったのは、後半の入りでワイルドナイツが奪ったトライ。前半終了間際にイーグルスにイエロカードが出ており数的有利の状況の中、怒涛の攻めを見せます。フェーズを重ねゴール前に迫ると、DFにぽっかり穴が。WTBマリカ・コロインベテが見逃さずチームファーストトライをあげ22-17と逆転に成功します。
「ダムをイメージしてください。一つ穴が開けば、水は一気に流れていきます」
試合後、ワイルドナイツのロビー・ディーンズHCがそう表現したように、この一つのトライからイーグルスDFが崩れていきます。
裏を狙う意識も強かったワイルドナイツ。52分には、キックの応酬からCTBディラン・ライリーが裏にキックを転がし再びコロインベテが抑えます。そこから相手に得点を許さず怒涛の5連続トライ。最後は「フィジカル面に成長を感じている」という驚異の37歳・HO堀江翔太もトライ。
気づけば51-20という大差でワイルドナイツが勝利となりました。イーグルスは後半ノートトライに。バックス展開をする場面が少なく得点につなげられませんでした。
試合終了後、ワイルドナイツの坂手キャプテンは「前半規律が乱れた部分があったが、後半入ってきたメンバーがエナジーを入れ23人全員で勝ち切った。体も痛い、しんどいゲームだったが勝ち切れたのは大きな一歩」と振り返りました。
対するイーグルスの沢木敬介HCは、「(前半の)40分は戦えていた。今まで築いてきたものに自信を持っていい。今日の負けですべてが消えるわけではない。このゲームでの成長を来週見せられるように3位を狙いたい」などと次週の3位決定戦に前を向いた上で、ワイルドナイツとの差は「プレーオフで変わるのがコリジョン(コンタクト)の部分。そこでワイルドナイツさんの経験値が上回った」としました。
【取材こぼれメモ】この試合、もう一つの見どころは両チーム司令塔のドロップゴール合戦。前半、ワイルドナイツ松田がゴール前で冷静に決めると、負けじとイーグルス田村も50m近いロングドロップゴールを披露、そのスキルフルなプレーに大いに湧きました。