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連覇のBL東京でも「100%の準備をしないと負ける」、あの埼玉WKが4位…リーグワン4季目の確実なレベルアップ【齋藤龍太郎】

連覇のBL東京でも「100%の準備をしないと負ける」、あの埼玉WKが4位…リーグワン4季目の確実なレベルアップ【齋藤龍太郎】

▲連覇を成し遂げたBL東京 写真:筆者撮影


リーグワンを毎節ピッチレベルで取材を続けてきた編集者兼ライター・フォトグラファーの齋藤龍太郎氏が、今シーズンを総括。選手や指揮官の言葉、スコアという数字からにじんでくるリーグのレベルアップとは。


海外スターが口を揃えた「レベルアップ」

過去に類を見ないほど濃密だったシーズンは、ひりつくようなわずか5点差の激闘によって締めくくられた。

6月1日、ジャパンラグビー リーグワン2024-25、ディビジョン1の真剣勝負の掉尾を飾るプレーオフトーナメント決勝が東京・国立競技場で行われた。

東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)とクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)、その最終スコアは18-13。東芝ブレイブルーパス東京がリーグワン移行後初の連覇を成し遂げ、前身のトップリーグ時代初期(3連覇1回、2連覇2回)に続いて新たな金字塔を築き上げた。

ディビジョン1全12チームの代表となった2チームによるファイナルは、国内最高峰リーグの頂上決戦にふさわしい名勝負となった。BL東京は前半序盤、リーグ戦最少失点のディフェンス力が自慢のS東京ベイを相手に、右手の骨折を押して強行出場した世界的司令塔のSOリッチー・モウンガが先制トライ。後半もパスダミーを絡めた得意のランで大きくゲインし、WTB森勇登のトライをアシストした。

S東京ベイもチームを支え続けてきたベテランCTB立川理道が1トライを返したものの、BL東京は終始リードを許さず、再び国立で優勝トロフィーを高々と掲げた。

決勝を終えた後、両チームの選手はリーグワンの接戦の多さと全体のレベルアップを実感していた。

惜しくも敗れたS東京ベイの2番で、南アフリカ代表としてラグビーワールドカップ2連覇に貢献(※ただし2023年大会は途中で負傷離脱)した世界的HOマルコム・マークスは、優勝した2022-23シーズン以来2シーズンぶりに復帰したリーグワンについてこのように語った。

「(リーグとして)確実に大きく伸びています。試合結果を見ても接戦が多く、シーズンを振り返っても出ている選手たちのレベルがどんどん上がっていると感じています」

決勝のプレーヤー・オブ・ザ・マッチとシーズンのMVPに輝いたBL東京のSOリッチー・モウンガの、決勝翌日のコメントにも実感がこもっていた。

「非常に素晴らしい大会になっています。経験値の高いスーパースターが世界中から集まっていることも(リーグワンが)レベルアップしていることのひとつの証でもあります。そして今季、自分が戦ってみて思ったのは、これまでの日本ラグビーにおいて各チームの差が最も小さいシーズンだったということです」

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7点差以内の接戦が全体の3分の1弱も

2024-25シーズン、ディビジョン1のリーグ戦とプレーオフのトータルで7点差以内(ドロー含む)の決着となったのは39試合。これは全体の3分の1弱を占める結果となり、全体の試合数も増えているが、2023-24シーズンと比べて4試合多くなった。

特にS東京ベイは決勝を含む21試合のうち10試合が7点差以内で、その内訳は6勝2敗2分け。プレーオフ準々決勝では東京サントリーサンゴリアスを5点差(○20-15)で、準決勝では埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)を4点差(〇28-24)で振り切った。強豪との接戦をものにする勝負強さは今季のリーグワンを盛り上げる要因になったと言えよう。

なお、BL東京に関しては7点差以内の試合は20試合中6試合(30%。内訳は4勝1敗1分け)と、その割合は平均の34.2%を下回る結果となった。圧巻の成績でシーズンを駆け抜けたように見えるが、対戦チーム別に見ると昨シーズン8位の静岡ブルーレヴズには2敗、埼玉WKにも1勝1分けと食い下がられた。以上を踏まえると、SOモウンガの「各チームの差が最も小さい」という肌感覚は的を射たものだと言えるだろう。

▲「各チームの差が最も小さい」と語ったリッチー・モウンガ 写真:筆者撮影

点差そのもの以上に、世界のトップ選手は一様にリーグワンのレベルアップを感じていたわけだ。

「埼玉WKが4位」その小さくない衝撃

そして、埼玉WKの4位という結果もひとつの物差しとなった。トップリーグのラストイヤーとリーグワン初代の王者である名門は、準決勝ではS東京ベイに24-28で、3位決定戦では17-22で敗れ、リーグワン4シーズン目にして初めて決勝進出を逃した。

優勝の可能性が潰えた準決勝の直後の記者会見でロビー・ディーンズHCは、

「リーグワンは間違いなくレベルアップしたと感じていますし、優勝できる能力があるチームがたくさんあるのが実状です。ただ今季に限っては、それは自分たちではありませんでした」

と語り、リーグ全体のレベルの向上を強調した。トップリーグ、リーグワンを牽引してきた埼玉WKは、一部選手の入れ替わりがあったものの大きくスタンダードを落としたわけではない。何よりリーグ戦を2位通過したことがそれを示している。しかしプレーオフでは複数のチームの後塵を拝した。どのチームからもターゲットに据えられてきた埼玉WKに突き付けられた現実こそが、リーグ全体の向上を物語っていると言えるだろう。

決勝直後のBL東京NO8リーチマイケル主将もこう言った。

「勝つために100%の準備をしないといけないのは(昨季から)変わらずで、それを5%でも落としたりしてしまうと負ける、そういうリーグになってきました」

そこから日本ラグビー全体に目を向ける。

「ただ(それ以上に)そんなリーグワンで戦って、将来的に日本代表になりたい、と考える選手をどれだけ増やせるかが大事です。

SOリッチー・モウンガ、FLシャノン・フリゼル(以上、BL東京)、HOマルコム・マークス(S東京ベイ)といった優秀な外国人選手たちと戦って、いい感触を持って『日本代表になりたい』という選手が増えれば、日本ラグビーはもっとよくなるんじゃないかと思います」

日本ラグビーの飛躍、向上の現場であり続けること。そのためにも質の高いコンペティションであり続けること。それがリーグワンの使命であることはこれからも変わらない。

取材・文:齋藤龍太郎

  • この記事を書いた人

齋藤龍太郎

編集プロダクション(株)楕円銀河代表。編集者兼ライター、時々フォトグラファーとしてラグビーを中心に幅広いジャンル、様々なメディアで活動中。複数の放送局のラグビー中継にも携わる。著書に『オールブラックス・プライド』(東邦出版)。元日本代表・田中史朗著『負けるぐらいなら、嫌われる』(KKベストセラーズ)の構成も手がけた。

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