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"超速"世界で一番速く。そして失われたラグビーへの愛を取り戻す。エディーHCが語るシン・日本ラグビー。

"超速"世界で一番速く。そして失われたラグビーへの愛を取り戻す。エディーHCが語るシン・日本ラグビー。

写真:編集部

1月、都内で行われたメディアブリーフィングでエディー・ジョーンズラグビー日本代表新HCが、報道陣を前に方向性を軽快にプレゼン。キーワードとして掲げる"超速"ラグビーとは何か、選手選考のポイントなどがおぼろげながら見えてきた。

日本人が一番変えられるのは速さ

ラグビー日本代表の現在地は世界12位。「トップ8の勝率はだいたい60%、トップ4は75%です」上位に食い込むためにはテストマッチでの勝ち星を増やし、2019年以降落ちてしまった勝率を上げていきたい。

そのために"超速"ラグビーを日本のアイデンティティに据える。なぜ速さにフォーカスするのか。

「ラグビーはモメンタム(勢い)が重要です。ニュートンの第二法則によれば、モメンタムは質量✕速度によって求められます。ただ、日本人の体は小さい。質量を大きく変えることは現実的ではありません。変えられるところは速度なんです」

速さとは何か。まずは物理的なスピードだ。エディーHCの分析によれば、現代ラグビーはNFLのようにゲームがブツ切れになる傾向が強くなっているという。その短いボールインプレーの時間で、どれだけスピーディーなプレーを反復できるかを求めていく。そして、コンタクト局面でのかがむスピード、「高い姿勢から低い姿勢になる速さ」も重要だという。

「高校、大学、リーグワンと日本のラグビーの試合を観ていますが、この部分の速さが失われています。週末のリーグワンの試合で一番速かったのは(NZ代表の)ダン・コールでした」

マインド面も含めて、「オーソドックスではないやり方」で選手たちを鍛え上げていく考えだ。また鬼の猛練習が待っているのか。

目も使って判断も超速に

▲ゴリラと違って人間は目が使える、と説いた
写真:編集部

そして同時に判断の速さも上げていく。一流選手は、局面局面で適切なプレーを瞬時に選びとることができる。そのためには、選手間で意思疎通がとれていなければならない。エディーHCは「動物界のトップである人間には、目という武器がある。もっと目を使え」と指摘する。

「今は下を向いている選手があまりにも多い。世界のトッププレイヤーは、目を通して決断することができます。そのスキルをもっと上げていかなければなりません。アイデアはいくつか持っています。AIを利用したトレーニングを導入する可能性もあります」

体格では劣っていても、パスをつなぎながらスピードで翻弄する。例として出た女子バスケットボール日本代表や、サッカースペイン代表、NBAのゴールデンステイトウォリアーズといった他競技のチームと目指す方向性は近いようだ。

「これは本当に大きなプロジェクトです。前日本代表指導陣が残した土台をもとに、世界一速いラグビーをするチームをつくりあげていきます。100%の力で取り組めばできないことはない。チャレンジです」


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「ラグビーを愛してもらいたい」

選手選考についても語られた。「チーム全体のスピードを考えると日本人選手がメインでないといけないということはわかっている」ジェイミージャパンは、日本代表史上もっとも海外出身選手が多いチームだったが、その割合は少なくなっていくかもしれない。

選考にあたって、エディーHCは選手のどんなところを見るか。

「コーチングでは教えられないゲームセンスを持っている選手は誰か、というポイントで試合を観ています。そして、成長したい、もっとよくなりたいというマインドを持っている選手を選びたい。いつも前のめりで向上心があるような。後ろに座っている選手は何も役に立ちません」

エディーHC自身の根底にもある飽くなき向上心。これは終盤に言及した「ラグビーへの愛」にもつながるだろう。プロ化という時代の流れに伴い、今のラグビー選手からはそれが失われてしまっていると嘆く。

「30年前、私が学校の先生だった時(オーストラリアで教師をしながらラグビーにも携わっていた)、授業が終わるのが待ち遠しくてしょうがなかった。早く練習に行きたいと思っていました。常にラグビーのことを考えていたかったんです。今はプロ化が進み、ラグビーにお金が発生します。大好きなラグビーをやってお金をもらえるなんて!でも、今選手たちの多くは『オフの時ぐらいはラグビーの話はしたくない』と思っています。ラグビーを愛してもらいたい。これは世界的にみても、トップ選手しか見られません。大きな課題と言えます」

日本代表は選手の高齢化も進んでいる。世代交代は必須だ。「リストは提供できませんが(笑)」高校日本代表監督やU20代表監督とも話をしながらめぼしい若手選手をリストアップしているところだという。彼らを試す場としては、準代表であるJAPAN XVを積極的に活用することを示唆した。

取材・文:竹林徹(リードラグビー)

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