現在開催中のサッカーワールドカップカタール大会では、予選プールで世界ランキング下位チームが強豪国を倒す「番狂わせ」が相次ぎ、話題になりました。もちろん優勝経験があるスペイン・ドイツを倒した日本も話題の中心に。
反対に実力差がはっきりとあらわれ、番狂わせが少ないのがラグビーというスポーツ。しかし、そんな中でも「伝説の番狂わせ」と評すべき、試合がいくつかあるのです。ここでは高校、大学VS社会人、代表戦の中から3試合をピックアップしました。
①修猷館29-26東福岡 高校ラグビー福岡県予選準々決勝 2014年5月
まず高校ラグビーから。こちらは福岡県予選での1戦です。
福岡県の絶対王者として君臨する東福岡高校。今年の「花園」にも福岡県代表として23大会連続の出場を果たしています。
しかしこの年、春の県予選で進学校・修猷館高校に足元をすくわれてしまうのです。まさか「ここで負けるはずがない」と東福岡はこの試合2軍メンバーで挑んでいたという説も。
修猷館の激しいタックルと結束力のあるモールが東福岡を苦しめ前半を19-19で食らいつき、後半リードを許すも残り1分で逆転!見事な勝利でした。
ちなみに東福岡高校はこの年の花園はリベンジを果たし、福岡県代表として出場。春の県予選でのつまずきが嘘のように圧勝して全国優勝を成し遂げました。
②早稲田大学28-24トヨタ自動車 日本選手権2回戦 2006年2月

こちらは大学チームが社会人チームを撃破した1戦。
この試合、大番狂わせであることは間違いありませんが、戦前から少なからず早稲田勝利の期待はありました。
当時、早稲田大学は黄金時代を迎えていました。
佐々木隆道キャプテン以下、後に日本代表で活躍する五郎丸歩、畠山健介、矢富勇毅ら…スター選手がズラリ。充実した戦力、このシーズン早稲田大学は「打倒トップリーグ」を掲げて、社会人チームへの勝利を本気で狙っていたのです。
試合も終始早稲田ペースですすみました。強力なトヨタのFWに対してモールで押し込み先制トライ。その後も、華麗なパスダミーからのトライ、インターセプトからのトライと、観客をわかせるプレーで得点を重ねます。終盤トヨタ自動車の猛追を振り切って最後は28-24の勝利。
大学チームが社会人のトップチームに勝利するのは、同じく早稲田大学が1988年に東芝府中を破って以来のことでした。なお、現在は日本選手権のフォーマットが変わったため、大学と社会人の対戦は行われなくなりました。
③日本代表 34-32 南アフリカ代表 ワールドカップ 2015年9月19日
こちらは皆さんご存知かと思います。わが日本代表の歴史的番狂わせです。
試合が行われたスタジアム・ブライトンにちなみ「ブライトンミラクル」とも呼ばれ、なんと映画化もされています。
2015年のワールドカップイングランド大会。大会が始まるまで、日本ラグビーは低迷の長いトンネルの中で苦しんでいました。1987年から連続7大会に出場するも、通算で1勝。
そんな日本の初戦の相手が「スプリングボクス」の愛称を持つ南アフリカ代表。こちらはワールドカップ3度の優勝を経験し、この大会でも優勝候補に数えられる強豪。
世界ランキングでも、日本が13位に対して南アフリカが3位。正直に言えば、日本のファンですらも「まさか勝てるとは」というのが本音のところでしょう。
しかし、名将エディー・ジョーンズの指導のもと日本代表は大きく成長していたのです。エディー氏はチームに凄まじい「プレッシャー」を与えて鍛え上げていました。
試合が始まるとパワーに押される場面はありますが、日本代表はスピードとフィットネスで上回りアグレッシブに攻め続けます。
ハイライトは試合終盤3点リードされた場面。
日本代表は相手の反則を誘い、ペナルティーを得ます。ゴールキックを狙って同点にするか、キックを蹴らずにトライを狙うか。エディーHCの指示を無視してマイケル・リーチキャプテンは後者を選択。
最後はスクラムからボールを継続し、感動的な逆転トライが生まれます。
以上、日本ラグビー「伝説の大番狂わせ」3選でした。
なお、2019年ワールドカップでの日本のアイルランド、スコットランド撃破はあえてここには入れていません。エディーHCが礎を築き、2019年には欧州の強豪国と互角に戦えるだけの自力がついていたからです。世界のトップ10入りを果たした日本代表は今は番狂わせを起こす立場というよりも、起こされる立場になったと言っても良いでしょう。