国内でニュージーランド、そして欧州遠征でイングランド、フランスと「ティア1」と呼ばれる強豪国と対戦した秋の日本代表。その戦いぶりは、元日本代表で現在は各放送局の解説者として活躍する、大西将太郎さんの眼にはどう映ったのでしょうか。そして、サッカー日本代表「サムライブルー」の活躍についても!
ティア1レベルに触れる貴重な機会に
編集部 秋のテストマッチ、大西さんはどう評価していますか?
大西 来年のワールドカップに向けて、新しい日本ラグビーの構築をしていく。そういったイメージを持って、テストマッチを戦ったのではないでしょうか。
本当は色々な選手を試したかったが、欧州遠征前のオーストラリアAとの初戦(※非テストマッチ扱い)を落としてしまった。そこから結果を求めて、ある程度メンバーを固定されましたが、出場した選手たちの強化につながったと思います。
何より、今回の秋シーズンはW杯前にティア1と対戦する最後のチャンスでした。そこで、ティア1のプレーレベルとメンタルの違いを肌で感じることができた貴重な機会になりました。
ディアンズら若手の成長を感じた
ーー個別のプレー面や良かった選手を教えていただけますか。
大西 イングランドには大差になってしまいましたけど、ティア1の国と勝負できるだけのディフェンスが構築されてきたな、と。
選手名をあげると、リーチマイケル、流大、中村亮土あたりの主力はテストマッチのゲーム勘を取り戻して、チーム全体を良い方向に導いていたように見えました。
若手もゲームを重ねるごとに成長していましたね。ニュージーランド戦で見事なキックチャージからのトライを見せた、ワーナー・ディアンズにとっては大きく進化した秋シーズンだったんじゃないでしょうか。
他の若手、李承信、齋藤直人、中野将伍といった面々も、2019年を見て「今度は自分が」と強い気持ちを持っている。選手たちの代表チームへのコミットメントが昔とは全く違いますね。底上げがしっかりされているし、チーム内競争も激しくなっている。
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スタンドオフの一番手は?
ーーチーム内競争といえば、スタンドオフのポジション争いはどのように見ていますか?秋のテストマッチではキャップ数の少ない選手が起用されました
大西 現状では、安定感のある松田力也をジェイミーHCは一番手として考えていて、怪我をしている彼の帰りを待っている感じです。
そして二番手以降を、秋のテストマッチで起用した山沢拓也、李、中尾隼太らで中長期的な目線で探っているように見えます。
アタックでの「取り切る力」をもっと
ーー秋のテストマッチ、ニュージーランド「オールブラックス」もあと一歩のところまで追い詰めましたが、ティア1から勝利はなりませんでした。どんなところが足りなかったと思いますか?
大西 やっぱりアタックでの「取り切る力」ですね。フランス戦では自陣から中野がブレイクして斎藤につなぎ一気にトライをとりましたが、ああいった場面がもっと必要です。
あとは80分を通したゲーム理解度。ゲームには、今絶対に(トライを)取らなくては、あるいは取られちゃいけない、そんな時間帯があります。そういった時間帯やチームの状態を理解し、判断を下していく。そういった所はまだまだこれからじゃないですかね。
サッカーで再認識「一致団結」が日本の強み
ーー最後に同じ「フットボール」でW杯で強豪に勝利した、サッカー日本代表「サムライブルー」の戦いはどう見ていましたか?
大西 今回のサッカー日本代表のスタイルは、選手たちの現時点でのスキルや能力から逆算してつくられたものだと思います。そして、初戦でドイツを撃破し「これでいこう」と固まった。
交代枠が5人に増えたのも味方しました。これがカタールW杯のみの措置なのか、今後もそうなるのかはまだわかりませんが。
2019年W杯でのラグビー日本代表と重なった点は「一致団結」ですね。サッカーなら11人、ラグビーなら15人が、控えの選手・ファン・国民の思いを乗せて戦える。これは変わらない日本の強さだなとあらためて感じました。
もちろん、海外リーグで活躍する選手が増えて、「個の強さ」が上がったことも大きいでしょう。でも、その個をつなぎ合わせるのは簡単なことじゃないんですよ。そういった意味でやはり、つなぎ合わせた森保監督はすごいなと思いました。そして、日本人らしさを持って勝ち切った。
国籍主義のサッカーと、協会主義のラグビーという違いはありますが、サッカー日本代表から学ぶべきものは多いのではないでしょうか。