2026-27シーズンから導入されるリーグワンの新選手登録規定が、波紋を広げている。日本国籍を取得した中島イシレリ、具智元、ラファエレ・ティモシー、レメキ・ロマノラバら帰化選手約30人が、独占禁止法違反として公正取引委員会に申告。東京地裁にも差し止めの仮処分を申し立てると事態は炎上、SNSではファンやラグビー界以外の知識人からも批判の声が相次いだ。これを受けてリーグワンは4月30日にメディア向けブリーフィングを開催し、玉塚元一理事長と東海林一専務理事が出席。「現時点で制度を見直す必要はない」と明言した。
新カテゴリA-1とA-2、何が変わるのか?
リーグワンが2025年5月に発表したのは、現行の「カテゴリA」を「A-1」「A-2」に二分する制度変更だ。
カテゴリA-1(国籍を問わず、次のいずれかに該当する選手)
- 日本の義務教育期間(9年間)のうち6年以上を日本で過ごした
- 日本出生
- 両親・祖父母のうち1名が日本出生
カテゴリA-2
- 他協会の代表歴がなく、日本協会で48カ月以上の継続登録がある選手(A-1以外)
特例として、A-2の要件を満たす選手のうち日本代表キャップを30以上持つ選手は、A-1に分類される。
出場人数の枠は、A-1が同時出場8名以上を必須、つまり過半数のオンザピッチが求められる。一方、A-2・B・Cは合計で同時出場最大7名までに制限される。
押し出される海外出身の日本代表戦士たち
この制度変更で、出場機会の縮小が予想されているのが、日本国籍を取得した海外出身の代表経験者たちだ。
2019年W杯で日本代表の8強入りに貢献した中島イシレリ(トンガ出身)、ラファエレ・ティモシー(NZ出身)、具智元(韓国出身)、レメキ・ロマノラバ(NZ出身)らは、いずれも日本代表として奮闘してきたレジェンドだが、新制度ではA-2に分類される見込みだ。
特例の30キャップにも届かない。具智元は29キャップであと1キャップ届かず、中島イシレリは9キャップ。日本ラグビーに貢献してきた選手たちが、わずかな数字の差で線引きされる構図だ。
選手側の言葉は重い。とくに中島は「悲しい。ラグビーをやりたいだけ、日本を強くしたいだけで頑張ってきたのに。レイシストがルールを作ってしまっている」と強い言葉を使ったことが報じられ、今季限りでの引退も示唆しているという。
そして今年4月20日、約30人の日本国籍取得選手が、新規定は独占禁止法に違反するとして公正取引委員会に申告。あわせて東京地裁に差し止めの仮処分を申し立てた。
「今やらないと手遅れに」「公平性を意識した」
これを受けて4月30日に開かれたブリーフィングで、リーグワン側は「現時点で制度を見直す予定はない」と明言した。SNSではラグビーファンやラグビー村以外の言論人からも非難の声が相次ぐ炎上状態だが、姿勢を崩さなかった。
人種・国籍差別ではないかという批判には、「今回の制度変更は、国籍に関連して選手を差別したり、出場機会を奪ったりすることを意図するものではありません」と強調した。
リーグワンの選手制度は従来からワールドラグビーの「所属協会主義」にならったもので、国籍で区別するルールではない、と強調。あくまで対象は「日本での義務教育期間」という育成環境にあるという立場だ。
あらためて制度変更の意図については以下のようにコメントした。
「日本で育ち、ラグビーに取り組んできた子どもたちや若い世代が、リーグワンをより身近な目標として捉え、『いつか自分もあの舞台に立ちたい』と思える環境を整えていくことにあります。日本の小中学校年代を含む時期を日本で過ごした選手がトップレベルで活躍する姿が、次の世代の憧れや挑戦する意欲につながっていくことを期待しています」
玉塚元一理事長は日本ラグビーの未来のためであると熱弁、また「今やらないと手遅れになる」と現状の危機感を口にしていた。
「現在のラグビー人口は9万人を割りました。1990年代、15万人がプレーしていた私の現役時代から4割減です。日本協会、関係者も非常に強い危機感を持っている。このままでは若者がラグビーから離れてしまう。今回の制度変更は日本におけるラグビー普及につながるものだと考えています」
制度設計の説明は、東海林一専務理事が担った。一貫して強調していたのは「公平性」だった。
たとえば、A-2でも日本代表30キャップ以上ならA-1扱いになる特例措置。該当選手は、リーチマイケルなど一部の選手に限られており、「30」という数字は厳しすぎるという声がある。しかし、「これより低いキャップ数にすると、対象選手の数にチーム間で差異が生まれてしまう」とコメント。
特定のチームが有利・不利になる線引きを避けるための、30という数字ということだ。
対話は重ねてきたというが…彼らをナメていなかったか
今回の新規定が発表されたのは、今から1年前、2025年の5月。それからリーグ側は現場サイドと対話を重ねてきたことを強調した。
「選手会、チームと様々なコミュニケーションをとってきた。その後もいろいろな声を頂戴して、必要な対話を実施してきました」
「チームとも方向性は満場一致という形になった」
また、今回東京地裁と公正取引委員会に申し立て行った選手サイドとも事前にやり取りがあったことを明かした。
「2026年1月に、代表弁護士より、連絡書という形で要望をもらっていました。その要望に対して、『こういう可能性であれば検討の可能性はある』と返したのですが、弁護士から『これでは受け入れられない』と」
内容の詳細は明かされなかったが、最終的に蹴られた格好だ。
リーグの顔役である玉塚氏が日本ラグビーへの危機感を熱っぽく語り、コンサル出身の東海林氏が制度設計の意図をロジカルに語る。ブリーフィーングには、一定の納得感はあった。
しかし結果的に今回の制度は、日本ラグビーに多大な貢献をしてきた選手たちから強い批判を生んでいる。対話は重ねてきたというが、集団で訴えられるというのは異常事態だ。東海林氏は反省点として、「直接のチャネルを持てなかった」ことをあげ、弁護士を通じたコミュニケーションに頼ってしまった点を悔やんでいたが、どこか彼らをナメていた節はなかっただろうか。
取材・文:竹林徹(リードラグビー)
