「ハカ」はラグビーファンならずとも知っている、ニュージーランド代表"オールブラックス"の戦いの儀式。ラグビー日本代表は今年の夏、"オールブラックスXV"との対戦を控えており、ハカも試合の見どころです。
そして、その後に戦うトンガ・サモア・フィジーといった太平洋諸国の代表もハカに似た「ウォークライ」をするのを知っているでしょうか?そこには彼らのアイデンティティーが色濃く投影されていて、それぞれに違いがあります。その名前や動きの特徴をまとめてみました。
静かな語りがシビレる トンガの「シピタウ」
トンガの代表チームが、屈強な肉体で披露するのは「シピタウ」です。
「カイラオ」と呼ばれる、現在もトンガ社会で行われる伝統的な踊りを進化させ、1980年代からラグビーの代表戦で取り入れるようになったそうです。
「全世界に向けて語りかける。海鷲(トンガ代表の愛称)は飢えている…」
導入で選手たちが静かに、力強く語り始めるのですが、ここがまるで映画のワンシーンのようでシビレます。
歌詞の日本語訳は以下の通り。魂や神といった表現からは、キリスト教的な価値観も感じます。
トンガ大使館ツイッターより
リーダー:さぁ戦うぞ!
チーム:トンガ!
全世界に向けて語りかける
海鷲は飢えている。
外国人と滞在者に分からせよ
今日、魂の破壊者の私は自由自在だ
至る所まで
人間らしさを消し去った
リーダー: エイ!
チーム:エイ!
リーダー:エイ!
チーム:エイ!打ち潰し、槍を前方に解き放て、私が刈り取ろう
そしていかなる恐怖心を打ち砕け!
リーダー: 砕け!
チーム: おう!
リーダー: 砕け!
チーム: おう!
これがトンガ人流の死に方だ!
受け継ぎし神とトンガ
エイー!
トンガ!
リズミカルな動き サモアの「シバタウ」
鮮やかなブルーのジャージが印象的なサモア代表チームは「シバタウ」を行います。
シバタウも「マウルウル」という、サモアの伝統的な踊りにルーツを持ちます。なお、マウルウルは主に女性が踊るものだったそう。
シバタウは動きが軽快です。選手たちはリーダーの号令とともに半身になって、手拍子や足踏みをしながら歌をラップのように合わせます。
歌詞には「マヌー・サモア」という言葉が出てきますが、これは「サモアの獣」という意味で、サモア代表の愛称でもあります。
獰猛な獣となって相手に襲いかかる闘魂を注入します。
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"殺気"潜ませる フィジーの「ジンビ」
最後のフィジー代表チームは「ジンビ」を行います。
もともとはフィジーの部族の戦いの踊りで、ラグビー代表戦では1939年にすでに取り入れられていたようです。
トンガ・サモアのウォークライは、ハカに動きが似ているところも多いですが、このジンビは全く異質です。
リーダー陣を前に出し、残りの選手はグラウンドの横幅いっぱい広がり後方から陣形を形成します。
左腕を突き出し、なにか武器を携えたような独特のポーズでジリジリと前進します。
派手な動きはないものの、確実に相手を仕留めるという"殺気"を感じるのがジンビです。
受けて立つ日本代表選手の表情にも注目
このようなウォークライに対して、日本代表の選手はどのような表情・動きで受けて立つのか。
個別具体の例で言えば、日本代表にも数多いトンガ出身の選手は「シピタウ」に対して、どんな表情をするのか、という所に注目するのも面白いでしょう。
今年のテストマッチはこの試合前のウォークライのシーンからすでに眼が離せません。