ワールドカップ初戦でチリに圧勝したラグビー日本代表は、第2戦でイングランドと対戦する。イングランドは世界ランキング6位、日本は過去10試合で全敗している難敵だ。しかし、今大会では「ラグビーの母国」に不安材料、言い換えれば日本にとって有利な材料もある。
名将エディーが去った
日本代表HCもつとめたエディー・ジョーンズはイングランドを指揮し2019年のワールドカップでは準優勝に導くなどの実績を残した。しかし、昨年のテストマッチで負け越しとなるとHCをあっけなく解任されてしまった。
時間がない中でバトンを託された後任のスティーブ・ボーズウィックだが、フォワード指導のスペシャリスト(かつて日本代表コーチとしてラインアウトを立て直した)というイメージが強い。全体の方向性をつける代表チームのHCとしては経験不足だ。
8月のテストマッチではチームの攻撃の形がつくれず単調なボール回しに終始した。結果、4試合中3試合に敗れフィジーには史上初の黒星を喫した。
イングランドは開幕戦でアルゼンチンを下したが、得点はすべてペナルティゴール・ドロップゴールから。「トライがとれなかった」とも言える。
現時点で、戦術的にも戦力的にもエディー体制からの上積みは感じられない。
また、エディーがいなくなったことで、日本の選手たちが無意識に持っていたであろう「エディーには敵わない」「イングランドには勝てない」というメンタルブロックもなくなったのではないか。
レッドカードで主力欠場
さらに、イングランドは直近の戦いでレッドカードが相次ぎ、余波で日本戦に少なくとも2人主力が欠場となる。
その2人は、昨秋日本を52-13で粉砕した一戦での先発メンバーでもあるSOオーウェン・ファレルとFLトム・カリーだ。
ファレルは本来のキャプテンでチームの精神的支柱。カリーはブレイクダウンで強さを発揮するフランカーであり、タックル数やターンオーバー数でトップクラス。この2人を欠くことはイングランドにとって大きな痛手となる。
一方日本もワールドカップ前にFLリーチ マイケルとピーター・ラブスカフニがレッドカードを受け出場停止となっていたが、イングランド戦前に処分が終わった。また、ふくらはぎに問題を抱えてチリ戦を急遽欠場したキャプテン姫野和樹もイングランド戦に間に合いそうだ。バックロー陣は十分戦える。
イングランドは、ほぼベストメンバーで戦ったアルゼンチン戦からの蓄積疲労もあるだろう。一方日本は、PR具智元が痛んだのが気がかりではあるが、チリ戦は後半余裕も出てフィジカルダメージは抑えられているはず。結果的に姫野は1試合丸々温存できた。
イングランドの不安材料が影を差す。日本はフォワードが踏ん張り得点につながるペナルティーキックを与えない、そしてバックスがフィジーが攻略したように大外のスペースを瞬発力を持って突ければ(今の日本代表両ウィングはフィジー出身だ)――歴史的勝利のチャンスはある。
対イングランド 過去の対戦成績
1971年9月24日●19-27
1971年9月28日●3-6
1979年5月13日●19-21
1979年5月20日●18-38
1986年10月11日●12-39
1987年5月30日●7-60
2003年7月3日●10-37
2003年7月6日●20-55
2018年11月18日●15-35
2022年11月13日●13-52