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エディーHCが語る“日本代表4つの課題”と“自身のプレッシャー”。ウワサの11月南ア戦についても前向きコメント

エディーHCが語る“日本代表4つの課題”と“自身のプレッシャー”。ウワサの11月南ア戦についても前向きコメント

写真:編集部

8月7日、ラグビー日本代表のエディー・ジョーンズHCが都内でメディア対応。7月のウェールズ戦2連戦(第1戦 24-19で勝利、第2戦 22-31で敗戦)を振り返り、現在のチームが抱える課題について語った。

エディーHCは夏のテストマッチシリーズから「4つのエリア」の課題が見つかったと総括。その後、記者陣との質疑応答では南アフリカ代表との対戦可能性や、自身にかかるプレッシャーについても言及した。

ウェールズ戦で浮き彫りになった4つの課題

① 感情面のコントロール(特に若手選手)

第1戦で12年ぶり2度目となるウェールズ撃破を果たしたものの、若手選手の気持ちが切れてしまったのか、第2戦では逆転負けを喫した。

「2戦目に正しいマインドに持っていくことは簡単なことではありませんでした」とエディーHC。「問題はやはり、経験が少ないことです。気持ちを安定させてパフォーマンスを発揮するためには、ビッグゲームを経験しなければ」とした。

メンタルコントロールのスキルについては、いま2015年W杯でも日本代表を支えた荒木香織氏を招聘し、選手への落とし込みを進めているようだ。

② アタックとキックのバランス

ボールを保持・展開しながら攻め続けるのか、それともキックを蹴って空中でのコンテスト(ボール争奪戦)を仕掛けていくのか。“超速ラグビー”を掲げるジャパンとしては悩ましい課題だ。

「現代ラグビーでは1試合で30回も空中コンテストが行われています。『超速ラグビー』は引き続き体現していきたいが、(一方で)パシフィックネーションズカップではキックを混ぜながらのアタッキングゲームを模索していきます」

③ ディフェンスの安定

一発でトライをとられる場面も多い、現在のジャパン。新しくディフェンスコーチを招聘し、「容赦ない、徹底的にDFしまくるスタイルを確立したい」とテコ入れを示唆。

「ディフェンスは素早くポジショニングをして、ラインで前に出て、タックルする。それだけです。あとはジャッカルする」とシンプルに説明。そんな“ディフェンスのいい習慣”を身につけた選手を増やしていきたいと語った。

ウェールズ戦第2戦では、1stフェーズのラックで4回ターンオーバーされるなど、ブレイクダウンでの精度に課題感を持っていた。

④ リーチに代わる次世代リーダーの育成

長く日本代表の主将を務めるリーチマイケルのリーダーシップを「素晴らしい」と称賛しつつも、もうこれ以上頼れない、という思いも透けていた。

「彼はキャリアの終盤を迎えていて、毎試合これが最後という感じでプレーしている。彼のリーダーシップがなくなったところで、誰がその差を埋めるか」

次世代リーダーの強化・育成について、「次のシリーズは絶好のチャンスだ」と前向きに捉えている。

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「南アフリカとはぜひ対戦したい」

記者陣との質疑応答では、11月の対戦が噂されている世界ランキング1位・南アフリカ代表との一戦について振られ、「実現すれば素晴らしい機会になる」と前向きな姿勢を示した。

「世界のトップチームから学べる、それ以上のものはない。準備まで時間がないし、フィジカル的にも圧倒されるのがわかっている。でもそういった環境の中でプレーできないと、経験は積めない。世界のベストチームの中で自分の立ち位置を把握する良い機会になると思う」

「南アフリカはパワーゲームを新しいレベルまで引き上げている。われわれはパワーゲームと真逆のことをしなければならない。違うスタイルがぶつかり合う一戦になるでしょう」

2015年W杯での歴史的勝利から10年。再び因縁の相手との対戦が実現すれば、日本からの注目度も高い一戦になるはず。

結果が出ないとき、プレッシャーはなかったのか

2024年の就任以降、テストマッチで大きく負け越し、今年7月のウェールズ戦で勝利するまで苦しい戦いが続いていたエディーHC。当メディアから「自身、プレッシャーを感じることはなかったのか」と質問すると、野暮な質問とばかり、以下のように答えた。

「私の仕事は正しくセレクションし、選手の強みを見つけて伸ばし、チームの経験値を上げていく。これが私のできる全てです」

「プレッシャーを感じるかということですが、あなたは仕事でプレッシャーを感じることはないんですか? 誰しもプレッシャーを抱えながら仕事をしているものです。自分はこの与えられた時間の中でチームを強化するという仕事をやっていくだけです」

あらためて今回のメディアブリーフィングで感じたのは、エディーHCの日本ラグビーに対する長期的な目線だ。目先の勝利に一喜一憂することなく、2027年W杯さらにその先の日本ラグビー界を見据えている。大学ラグビーやリーグワンという既存の国内ラグビーの枠組みへの問題意識も強い。

とはいえ、ファンからすれば「悠長には構えていられない」だろう。2027年W杯まではあと2年。年内のテストマッチの結果が世界ランキング、ひいてはワールドカップのプール分けに影響してくるのだ。8月からのパシフィックネーションズカップは全勝を期待したい。

取材・文:竹林徹(リードラグビー)

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