日本ラグビー界の頂点「リーグワン」が2024年冬開幕の2024-25シーズンで、4シーズン目を迎える。トップリーグ時代の企業スポーツから、Jリーグ型の地域密着プロリーグへ。3部制導入やホスト&ビジター制など、大きな変革に挑戦し続けるリーグワンの全容を、2024年開幕直前、最新情報とともに解説する。
清宮克幸氏の構想から始まった「リーグワン」
リーグワンの構想が生まれたのは、日本中がラグビーの熱狂に湧いた2019年ワールドカップの開幕直前。早稲田大学、サントリー、ヤマハの監督を歴任し、現在は日本協会副会長をつとめる清宮克幸氏が、カンファレンスで日本ラグビー初となるプロリーグの構想を語り、日経新聞などでスクープとして報じられた。
その構想は、革新的なものだった。
ワールドカップで試合が行われた12都市を「オリジン12」として、各都市に新チームを立ち上げ、上位チームが海外強豪チームと戦う「クロスボーダーマッチ※」を設けるという構想は、アマチュアリズムが強かったラグビー界に大きな衝撃を与えた。サッカーのJリーグや、近年成長が著しいBリーグのようなプロリーグのラグビー版という位置づけだ。
その後コロナ禍や体制変更などもありつつ、2021年1月にリーグワンとしてリーグがスタート。
※クロスボーダーマッチは2023-24シーズンから正式に実施され、4試合が行われた。ただし、2024-25シーズンはスケジュール面での問題から「見送り」。
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正式名称は「NTTジャパンラグビー リーグワン」
リーグワンの正式名称は「NTTジャパンラグビー リーグワン」。"ONE"は、ラグビー日本代表の代名詞であり、2019年の流行語大賞にもなった、"ONE TEAM"を連想させる。
リーグワンのロゴは、黒と赤を基調に、日の丸をラグビーボールが包み込むデザインになっている。日本列島のラグビーの熱狂をひとつに集めるリーグと言えるだろう。
「ファン、チーム、企業、地域が熱狂を包み込み、結束や連帯感をデザインにすることで、LEAGUE ONEの世界に向けて飛躍している姿を表しています」
(リーグワン公式HPより)
また後にNTTがタイトルパートナーになり、大会名称に「NTT」が加えられた。
「トップリーグ」からここが変わった
具体的にはトップリーグ時代からどこが変わったのか? 変化がわかりやすいポイントをまとめる。
①2部⇒3部制になった
以前は、トップリーグ16チームとその下部のチャレンジリーグ9チームによる2部制だった。
それがリーグワンでは、DIVSION1~3までの3部制に再編。トップリーグの順位のほか、各チームの事業運営力(収益性やファンクラブの力、SNSの発信力なども)を加味して総合的に判断された。
DIV1⇔DIV2⇔DIV3で、毎年入れ替え戦が行われ、昇格・降格争いが激しくなっている。2023-24シーズンからは、以下の区分けになる。
DIVISION1
- 東芝ブレイブルーパス東京
- 埼玉ワイルドナイツ
- 東京サンゴリアス
- 横浜キヤノンイーグルス
- コベルコ神戸スティーラーズ
- クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
- トヨタヴェルブリッツ
- 静岡ブルーレヴズ
- 三菱重工相模原ダイナボアーズ
- ブラックラムズ東京
- 三重ホンダヒート
- 浦安D-Rocks(↑昇格)
DIVISION2
- 花園近鉄ライナーズ(↓降格)
- 豊田自動織機シャトルズ愛知
- グリーンロケッツ東葛
- レッドハリケーンズ大阪
- 九州電力キューデンヴォルテクス
- 日本製鉄釜石シーウェイブスRFC
- 日野レッドドルフィンズ(↑昇格)
- 清水建設江東ブルーシャークス(↑昇格)
DIVISION3
- クリタウォーターガッシュ昭島
- マツダスカイアクティブズ広島
- 中国電力レッドレグリオンズ
- ヤクルトレビンズ戸田(⤴️新規参入)
- ルリーロ福岡(⤴️新規参入)
- 狭山セコムラガッツ(⤴️新規参入)
②ホスト&ビジター制度が導入された
トップリーグ時代は、厳密なホーム&アウェイにはなっておらず両チームとも全く関係のない地方で試合が組まれていたり、そもそもホームスタジアムがないチームもあったが、リーグワンでは、各チームに本拠地・ホームスタジアムが割り当てられている。
リーグワンでは「ホスト&ビジター」という名称で、ホストゲーム・ビジターゲームの区分けが明確に。スタジアムの雰囲気も変わり、場内実況などでホストチームを盛り上げるような工夫が見られるようになった。
ただ、プレーオフなど一部の試合は主管がチームではなく、リーグという運用も見られる。
③チーム名に地域名が入るように
本拠地を明確化するために、リーグワンへの以降にあたりチーム名に地域名が追加。その結果NTTコムなどは一時、「NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安」というとてつもない長さのチーム名になった(29字)。
他方、静岡ブルーレヴズ(前身はヤマハ発動機ジュビロ)のように、企業名を排して、チームを運営する新会社を設立しているチームも。先述のNTTコムも、2022-23シーズンから浦安D-Rocksとなり、リブランディングしている。
④レベルアップ&プロ選手の増加
これは定量的なデータで示すのは難しいが、リーグワンには大物外国人選手が多数参加し、よりレベルの高いプロフェッショナルなリーグになっている。当初構想のような完全プロリーグにはなっていないものの、プロ選手も増えていて「現在50~60%がプロ選手」(リーグ関係者)とのこと。
かつてないハイレベルなリーグになっているのは間違いない。海外からの注目も高まっていると聞く。
2024-25シーズン、注目の展開
開幕戦で強豪が激突
2024-25シーズンの開幕を告げる一戦では、昨シーズンのリーグで2位・埼玉ワイルドナイツと、同3位・東京サントリーサンゴリアスが激突。日本最高峰の戦いにふさわしい注目カードで新シーズンの幕が開く。
新規参入組の野心的な挑戦
DIVISION3では新参入組同士の対決、ルリーロ福岡VSヤクルトレビンズが注目。特にルリーロ福岡は、イオセファツ・マレコ(東芝から)や永富健太郎(キヤノンから)といったDIVISION1経験者を獲得するなど、積極的な補強を展開。若手の育成も含め、チーム作りに本気の姿勢を見せている。
ルリーロ福岡は母体企業を持たない中、資金面を個人スポンサー制度、クラウドファンディングなどを活用しクリア。運営面での取り組みも、編集部は注目している。
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4シーズン目の課題と展望
リーグワンは今産みの苦しみで、課題もまだまだ多い。ホスト&ビジター制を導入したが故、地方開催が少なくなり地方ファンからは不満も出ている。
また、集客面も1季から2季、2季から3季、3季から4季と確実に上積みはされているものの、リーグが当初掲げていた目標値とはギャップがある。
集客面については、東海林リーグ専務理事も「まだまた」という課題感を口にしていた。
われわれとしても「まだまだ」という課題感は持っています。新しいファンの開拓が十分にできていません。リーグの認知度をさらに上げ、ラグビーの魅力を伝えていく。その上で実際にスタジアムに足を運んでいただく仕組みを作っていきたいと考えています。
しかし、その歩みは着実だ。各チームが自らの立ち位置で明確な目標を持って戦えるようになり、地域に根ざしたファンベースも少しずつ構築されているように見える。
新時代の幕開け
トップリーグ時代の18年間で築かれた日本ラグビーの基盤。その上に、リーグワンは新たな価値を創造しようとしている。プロ化への道のり、地域との結びつき、世界への挑戦。2024年、その挑戦は新たなステージへと進もうとしている。