2シーズン目を迎えた「リーグワン」。開幕節でどこよりも早いキックオフとなった三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原)対リコーブラックラムズ東京(以下、東京)戦が12月17日、聖地・秩父宮ラグビー場で行われました。今季DIVISION1昇格組の相模原が東京を34-8で下しました。
「東京有利」を覆す"サプライズ"な一戦に
試合後、東京のHCピューター・ヒューワットの口から出た"サプライズ"という言葉がしっくりくる一戦。戦前の情報からは「東京有利」の予想でした。
相模原は昨季DIVISION2で3位のチーム。そこから入れ替え戦を勝ち抜き今季からDIVSION1に昇格。この試合、「注目の外国人選手」としてピックアップしたマット・トゥームアはメンバー外で、現役の代表クラスは7人制のヘンリー・ブラッキンのみというメンバー。
対する東京はDIVISION1で昨季9位。練習試合でも9月には相模原を24-12で下し、11月に入ってからは東京サントリーサンゴリアスと花園近鉄ライナーズに勝利するなど調子をあげていました。
戦力的にもこの試合東京はイングランド代表22キャップのLOネイサン・ヒューズ、ウェールズ代表29キャップのCTBハドレー・パークス、昨季ベスト15に選ばれたSOアイザック・ルーカス、今季日本代表スコッド選出のFBメイン平など、充実の布陣。
前半 ボール・地域支配率で東京優勢も…
実際に試合序盤ペースを握ったのは東京。接点の強さでボールを奪い、攻めに周ります。
9分にいきなりトライチャンス。SHからのボックスキックでゲームを組み立てようとする相模原に、ヒューズが襲いかかりターンオーバー。そこからキックパスを交え、WTBネタニ・ヴァカヤリアがゴールラインに飛び込むも好タックルでグラウンディングならず。
その後も再三トライチャンスをつくりますが、相模原のしぶといディフェンスに阻まれます。
まず3点を取りに行こうと、東京は17分にPGを決めます。序盤はボール・地域支配率ともに東京が圧倒していて、大量得点の予感さえありました。
しかし20分、相模原がワンチャンスをモノにします。ゴール前ラインアウトからプッシュをせず持ち出し、バックス陣でショートパス。最後はSOヘンリー・ブラッキンが飛び込み、その後のゴールも決まって7-3と逆転。見事なコンビネーションでした。
24分にビックプレー。東京がゴール前でモールを形成するも、相模原のLOウォルト・スティーンカンプが203cmの巨体で塊に割って入ります。ターンオーバーに成功。
何度迫っても取り切れない。ここから東京に焦りが生まれジワリと相模原ペースに。37分に途中出場でFBに入った石田一貴が冷静にPGを決め10-3。
そして前半終了間際にはゴール前スクラムからヘンリー・ブラッキンが再び飛び込んで相模原が14点差リードで前半を折り返しました。
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後半 勝負を決定づけたスクラムのワンプッシュ
後半に入ると相模原の強度が上がり敵陣に攻め入る場面が増えていきます。53分にはラインアウトからFL坂本侑翼が抑えて、24-3とします。
37歳のベテランPR川俣直樹も見せ場を作ります。56分、ボールを持ってゴール前に迫る。
そして直後のスクラムでは川俣サイドからプレッシャーをかけペナルティーを誘発。スクラム戦はここまでほぼ互角でしたが、東京側はフロントーの交代も影響したか。「誰が出ても同じセットアップを」と東京のHO武井日向は振り返りました。
結果、このプレーがPGにつながり27-3。残り20分で3トライ3ゴールでも追いつけないセーフティーリードに。勝負を決定づけたひと押しでした。
相模原はその後もう1トライ追加。東京は結局、74分にヴァカヤリアが左隅に飛び込んだのが唯一のトライになりました。
終わってみれば34-8という予想外の大差に。
「DIVISION1で戦えるという実感」を持っていた
試合後の記者会見で「前半のタフな時間帯を気を抜かず守りきった、敵陣に入ったときにトライを取りきった」と振り返ったのは相模原キャプテンの岩村昂太。「プレシーズンの7月からフィットネス・フィジカルを強化してきた。実際にDIVISION1で戦えるという実感もあった」と続けて語り、選手側からすればこの快勝は"サプライズ"ではなかったはず。チーム内競争も激しくなっているとのこと。
対する東京は、BK陣の連携がまだとれていないような場面が目立ちました。次戦以降の修正に期待。
リードラグビー選MOMは石田一貴
途中出場ながら、5本のゴールキックを全て決め12得点をあげた石田一貴を選出(公式MOMはヘンリー・ブラッキン)。
以下、ミックスゾーンでの本人のコメントをまとめます。
ーー本職でないFBでのプレーについて。
大学時代は経験がなかったが、相模原にきて前のヘッドコーチから15番もできる選手に、とサポートしてもらっている。両方のポジションをやることで学べることがある。ただ、個人の思いとしてはやはり10番で試合に出たい。先発10番に名前がなかったのは悔しかった。
ーー自分の強みをどう分析しているか。
自分の強みはやはりキック。キックから2点、3点を追加できれば選手たちを気持ちの部分でサポートできる。また相手にプレッシャーをかけられる。確実に決めてチームの勝利に貢献することを意識している。
ーーこの先の野望は。
チーム内でのレギュラー争いに勝つ。一戦、一戦勝ちにこだわる。あまり先の展望は考えていない。次のトヨタ戦に向けて準備する。
ーー憧れている選手は。
クエイド・クーパー(花園近鉄ライナーズ)。ラグビーを始めたキッカケの選手。大好きでインスタグラムもフォローしている。高校時代はクーパーの曲芸的なプレーを真似して怒られていた。憧れではあるが、自分とタイプは違う。試合になれば相手。
飛距離の出るタッチキック、安定感のあるフィールディングでもチームに貢献。26歳、身体のキレも感じさせました。要注目!