トップ校の選手の体格やスキルは飛躍的にレベルアップしている高校ラグビーですが、一方で地盤沈下も心配されています。全国で部員数が減少し、直近の全国高校ラグビー大会「花園」鳥取県予選では、倉吉東高校以外の学校が15人のメンバーを揃えられず、一試合も行われないまま代表が決定するという事態に。
高体連のデータからラグビー人口の推移と減少の要因、打ち手を考えます。
高校ラグビー人口は20年で4割減少

高校ラグビーの競技人口はこの20年で減り続けています。高体連の加盟人数ベースで、2003年には30,419人だった数字は右肩下がりを続けて直近の2022年には、17,649人という数字に。40%以上も減少しています。
同じ球技の数字も調べてみました。

サッカーは2003年の149,591人から2023年は147,086人、バスケットボールは2003年の95,459人から2023年は83,624人。バレーボールは2003年の48,314人から2023年は50,972人という結果に。バスケは1万人以上減っていますが、サッカーは微減、バレーはむしろ数字を盛り返しています。
ラグビーの右肩下がりと比べれば”横ばい”と表現して差し支えないでしょう。
減少率ワーストは青森、増加は島根のみ
高校ラグビー人口に戻って、その推移を都道府県別にも見てみました。
減少率はワーストの青森県で2003年の895人から300人を切り、なんと3分の1になっていました。
反対に20年前から増加している県を調べてみると、島根1県のみ。2003年の125人から2022年が128人と、わずか3人ながらプラスに。ただ、これは100人以上の部員数を誇る強豪・石見智翠館の部員が大半を占めると見られます。
なぜ高校ラグビー人口はかくも減っているか
減少の理由を考えてみると、まずひとつは少子化という社会構造全体の変化によって、高校生の数そのものが減っているという問題があります。
そして、ラグビー特有の要素で言えば、学校に「安全・安心」を求める風潮が強まる中で、タックルなど危険なプレーのイメージがあり、生徒そして保護者から敬遠されるようになっているのではないでしょうか。

写真:Patrick Case on Pexels.com
またコロナ禍も拍車をかけているように思います。ラグビーは言うまでもなく接触が多く、”密”なスポーツです。
事実、コロナが蔓延した2020年は前年の21,702人から一気に20,011人と前年からの減り幅が一番大きい年となってしまいました。前年にはワールドカップが日本で行われ、日本中がラグビーフィーバーに湧いたにもかかわらず、高校ラグビーの部員増にはつながらなかったという厳しい現実がありました。
合同チームの容認に加え、ラグビー普及の根本的取り組みを
こうした現実に高体連も危機感を持っているようです。
昨年末、ラグビーを含む9競技で「合同チーム」の全国大会出場を認めることを検討しているという報道がありました。以前からラグビーでは、学校をまたいだ合同チーム自体は認められていましたが、仮に都道府県予選で優勝しても全国大会に進めないという問題がありました。それをクリアしようというものです。
しかし、これは応急処置的なもので、もっと根本的に高校ラグビー人口を増やす取り組みが必要になるでしょう。
以前、東洋経済オンラインで行われた対談で元日本代表の廣瀬俊朗氏と、大西将太郎氏は、ラグビー普及に関してこんな打ち手を口にしていました。
廣瀬:ラグビースクールやアカデミーも数がまだまだ足りていないと思います。いま多いのはジュニア期にプレーしていた子どもが中学生になって離れてしまうパターン。
1週間に1回でも2回でも、ほかの部活に入りながらラグビーができる環境があれば、また高校になってやろうと思ってくれるかもしれない。
大西:トシが言ったことも大事。ただでさえこれから子どもが減っていって、部活とかも取り合いになる。
でも、アメリカのようなシーズン制にしていろんなスポーツができるようにすればいい。各スポーツ界がラグビー憲章の「結束」じゃないけど、取り合うんじゃなくてともに認め合うことができればいいんじゃないかな。
ラグビー観戦しながら考える「多様性の本質」https://toyokeizai.net/articles/-/304801?page=3
廣瀬氏が「ほかの部活に入りながらラグビーができる環境」、大西氏が「シーズン制にしていろんなスポーツができるように」と触れたところにヒントがあるのではないでしょうか。
ラグビーはバスケットボールやサッカーなど、他の球技と共通する要素もあります。ラグビーの経験がバスケットボールのコンタクトプレーがいきたり、サッカーの経験がラグビーのキック向上につながったり、選手にとっても相乗効果が得られるはずです。
少子化はこれからも続き、全体のパイが小さくなっていくのは避けられません。他競技とも連携して考えていくべき問題なのではないでしょうか。