リーグワン 書籍

清宮氏の撤退、謎のチーム入れ替え…「リーグワン」の”失敗”を谷口真由美氏が暴露する

2022年3月13日

清宮氏の撤退、謎のチーム入れ替え…「リーグワン」の”失敗”を谷口真由美氏が暴露する

コロナ禍もあり、「リーグワン」1年目の盛り上がりは今ひとつというのが現状です。その発足に向け、中心的な役割を果たしてきた谷口真由美氏が著した『おっさんの掟』では、「リーグワン」開幕に至るまでの”失敗”が描かれています。新リーグ立ち上げを主導していた清宮克幸氏の撤退、謎のチーム入れ替えなどに触れながら、本書の内容をまとめていきます。

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谷口氏が日本ラグビー協会にやってきた背景

著者の谷口氏は国際人権法・ジェンダー法などを専門とする、バリバリの法学者です。女性でラグビー競技経験もなし。そんな彼女がなぜラグビー新リーグの発足に関わるようになったのでしょうか。

実は父親(龍平氏)が近鉄のラグビー選手→コーチという経歴。谷口氏はチームの合宿所があった花園ラグビー場で育ちました。そこで、坂田好弘氏、川村幸治氏ら日本ラグビー協会の重鎮と面識を持っていました。

そしてワールドカップ日本大会の開幕の数ヶ月前に、2人から突然のオファーの電話があったそう。

2019年5月のある日。午後にかかってきた電話で、私の生活は一変しました。

『おっさんの掟』P26より)

当時スポーツ庁で「女性理事の割合を40%に」という指針が示されたこともあって、急いで女性理事を増やす必要がありました。

そして、新リーグ立ち上げを主導していた清宮氏の後押しもあり、谷口氏は2019年6月に日本ラグビーフットボール協会理事に就任。その後新リーグ法人準備室長に就任し、新リーグ審査委員長も兼任していくことになります。

しかし、そこで谷口氏はラグビー協会の構造的問題にぶつかり、結果的に「リーグワン」開幕前に協会を追われてしまいます。本書ではその経緯が生々しく暴露されています。

改革の騎手とされた清宮氏の撤退

清宮氏は、2019年ワールドカップ後、自民党スポーツ立国調査会のスポーツビジネス小委員会でプロリーグ構想を語りました。これは全国紙でも大きく報道されました。

しかし、この発言をすることに関しても協会内部で全く根回しをしていなかったのだとか。とにかく独断専行で動く清宮氏に反発が大きかったそう。

清宮氏が提唱した「オリジン12」(2019年ワールドカップ日本大会が開催された札幌、釜石、熊谷、東京、横浜、静岡、豊田、大阪、神戸、福岡、大分、熊本の全国12都市にそれぞれの拠点を持ったチームを作る動き)も各チームの母体企業から賛同を得ることが難しい状況でした。しかし、清宮氏は時間がない中で「このプランに賛同を得られたチームだけでプロリーグを始めよう」と押し切ろうとしたそう。

結果、協会内部で半清宮派が生まれてしまったようです。また、清宮氏側も自身のチームメンバーを古巣の早稲田ラグビー部OB+電通関係者などで固め、ラグビー協会の”プロパー”と呼べるメンバーを入れなかったそうです。

両者の溝は大きくなり、清宮氏は2020年10月1日付けで「新リーグマーケティング会社準備室」を退いてしまいます。その真相について清宮氏は直接語ってはいませんが谷口氏はこうまとめています。

いずれにしても、清宮さんはラグビー協会という”ムラ社会の掟”を完全に逸脱したことで、外されてしまったように私には見えました。新リーグにかける清宮さんの情熱は並外れたものがあったので、その失望はさぞ大きかったことだと思います。

『おっさんの掟』P123より)

トヨタの”なめている”レポート、不可解なチーム入れ替え

また「リーグワン」のチーム審査でのゴタゴタも暴露されています。「リーグワン」は各チームがDVISION1~3に所属する3部制となっていますが、このふるい分けの審査を行ったのが谷口氏。

新リーグの審査にあたっては、「事業力」や「社会力」など「競技力」以外の項目が多く含まれ、レポートベースで評価します。つまりただ強いだけではダメで、きちんとした事業や社会活動のプランを策定した上でドキュメント化することが求められています。

しかし、強豪トヨタは「ラグビー教室の記事の切り抜きを貼り付けているだけ」の”なめている”レポートを提出してきた、と谷口氏は暴露しています。

たとえば、「次世代養成のためのラグビー教室やアカデミー開催」の項目では、これまでの実績や将来の展望を詳細に記した積極的なチームがある一方で、ラグビー教室の記事の切り抜きを貼り付けているだけのところも。それはトップリーグを代表する名門チームでしたが、そのお粗末さに私は頭を抱えてしまいました。

『おっさんの掟』P117より)

そしてこのトヨタと、近鉄の順位を巡って不可解なチーム入れ替えがありました。審査委員会が当初計算した順位では、「近鉄ライナーズ」が12位でDVISION1、「トヨタ自動車ヴェルブリッツ」が13位でDVISION2となるはずでした。

トップリーグ時代の実績は、トヨタが近鉄をはるかに上回ります。ただ、先述のレポートでさまざまな不備があったことでトヨタはDIVISION2相当という結果だったというわけです。

しかし、「整合性が取れない」という理由から再計算が行われ近鉄が13位に、トヨタが12位と入れ替えられることになります。

明確な審査基準がありながら、その基準に基づいた順位付けが無視されるのはあってはならないこと。

結局、「リーグワン」の名称発表と、DVISON1~3のチーム分け発表された2021年7月16日には、谷口氏はラグビー協会のポジションを退いていました。6月19日付でラグビー協会理事を退任し、同月末日には審査委員長の職も解かれていました。

『おっさんの掟』はあくまで谷口氏視点の記述なので、当然協会内部の反論もあると思います。しかし、現状「リーグワン」が今ひとつ盛り上がりにかける現状を見ても、本書で述べられている”失敗”は認める必要があるのではないでしょうか。「リーグワン」2季目からのアップデートが求められます。

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