3シーズン目を迎えるリーグワン。今年はワールドカップイヤー。フランス大会決勝でも火花を散らした、南アフリカ・ニュージーランドのスター選手が続々と参戦しリーグに彩りを添える。両国選手を中心に、ファン必見の注目外国人選手を昨シーズンに引き続き解説する。
※日本代表の海外出身選手者は対象外
※キャップ数はシーズン開幕時点のもの
昨シーズン版はコチラ👇
①チェスリン・コルビ(南アフリカ/東京サントリーサンゴリアス)
172cmは日本人男性の平均身長と同程度。ラグビー選手として小柄だが「世界最高のウイング」に名前があがるトライゲッターだ。
超人的な俊敏性、唯一無二のステップワークは必見。そして何より「世界最高」の真骨頂は大型FWに正面衝突を挑み、一歩でも前に出ようともがく、アタッキングマインドにある。
コルビはサンゴリアスの入団会見で、小柄な選手へ向けて「信じる事を止めないでほしい」と熱く語りかけた。コルビのプレーを目撃した者は、必ず力強いメッセージを受け取るだろう。
②サム・ケイン(NZ/東京サントリーサンゴリアス)
2023年W杯でニュージーランド代表“オールブラックス”のキャプテンを務めた世界最高峰のディフェンダーだ。
黒衣のプライドを体現する模範的な存在であり、ピッチ内では古典派フランカーとして激しいタックル、ボールを奪う「ジャッカル」で献身する。
チェスリン・コルビとの共同入団会見では「ボールを取り返したら隣のチェスリンにボールを回してトライを決めてほしい」と語った。ケイン、コルビのホットラインに期待しよう。
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③ガレス・アンスコム(ウェールズ/東京サントリーサンゴリアス)
勝負所で力を発揮する世界屈指のプレースキッカーだ。2023年W杯ではウェールズ代表10番ダン・ビガーの控えだったが、途中出場から涼しい顔でプレースキックを淡々と決めた。
股関節の怪我によりリーグ序盤から出場するかは微妙であるが、復帰すれば僅差勝負で必ずや重要な役割を果たすだろう。
プレーオフの準決勝、決勝でアンスコムがプレースキックを次々に決め、サンゴリアスを2017年度以来の優勝に導く――ファンにそんな期待を抱かせてくれる注目キッカーだ。
④マリカ・コロインベテ(オーストラリア/埼玉パナソニックワイルドナイツ)
学生時代に100mで10秒75を叩き出した超高速フィニッシャー。2023年W杯のオーストラリア代表は若手主体に舵を切り、元主将マイケル・フーパーらベテランが落選したが、31歳のコロインベテは2大会連続出場を果たした。
衝突の激しい13人制ラグビーの元スターでもある。転向当初の課題だったディフェンスを克服し、トップスピードの強烈タックルで相手を震え上がらせる。
タッチライン際の逆ヘッドタックル(キャリアーの進行方向に頭を入れるタックル)で相手を止めるプレーが有名だが、危険なので良い子は真似をしないように。
⑤アーディー・サべア(NZ/コベルコ神戸スティーラーズ)
2023年のラグビー界で「世界No.1のナンバーエイト」の議論があれば、真っ先に名前が挙がるだろう。
かつては「ジョナ・ロムーの再来」といわれた兄ジュリアン(モアナ・パシフィカ)の弟という印象だったが、2023年の世界最優秀選手に選ばれ、いまやオールブラックス不動のバックロー、ナンバーエイトだ。
ピッチでは強烈レッグドライブで守備を蹴散らすブルドーザーだが、オールブラックスの品格を備えた好漢。気さくな人柄で人気が高く、チームメイトのPR中島イシレリはファンを公言する一人だ。
⑥ボーデン・バレット(NZ/トヨタヴェルブリッツ)
超絶技巧で「ゼロ」からトライを生み出すプレーは芸術的。2016年から2年連続で世界最優秀選手に選ばれ、2021年度にはサントリーサンゴリアスでプレー。別格のプレーを見せつけ、トップリーグのトライ王にも輝いた。
8人きょうだいの次男で、2023年W杯は弟のLOスコット、CTB/FBジョーディーと共に3大会連続出場を果たした。
攻守交代から一気にトライを奪うスピード、得点感覚は比類がない。長短のキックも正確だ。チームが逆転したい勝負所にこそ、この人に注目したい。必ず突破口を拓くはずだ。
⑦リッチー・モウンガ(NZ/東芝ブレイブルーパス東京)
この男がいなければオールブラックスの10番は今でもボーデン・バレットだったかもしれない。フィールドプレーのミスは皆無。超高精度のスキルでオールブラックスの攻撃を先導するスタンドオフだ。
特筆すべきはスピードと突破能力。俊敏性はバレットを上回り、守備網を小刻みのステップで切り裂く。守備も献身的であり、2019年大会ではチェスリン・コルビに追いつきトライを防いだ。
黒衣の背番号10は、東芝ブレイブルーパス東京を2009年度以来の優勝に導けるか。
⑧シャノン・フリゼル(NZ/東芝ブレイブルーパス東京)
攻撃的フォワードに必要な全てを備えている、と言っても過言ではない。195cmの巨躯ながらスピードも抜群。タッチライン際の疾走を一発で止められる者はまずいない。
オフロードパスなどのスキルも高く、ハイランダーズ(NZ)時代は指揮官だったトニー・ブラウン(元日本代表アタックコーチ)にリンクプレーも任されていた。サッカーの元U17トンガ代表であり、足技まである。
完全無欠のモンスター・フォワード。出場すれば必ず決定的なプレーをする。
⑨ファフ・デクラーク(南アフリカ/横浜キヤノンイーグルス)
昨季は横浜キヤノンイーグルス初の3位に大貢献。南アフリカ代表の超アタッキングハーフといえばこの人だ。
左足のキックは正確で、プレースキッカーも担える。身長はコルビと同程度の172cmだが、守備力はまさに「9番目のフォワード」。2023年W杯の準々決勝ではノックオンを誘う守備でゲームを終わらせ、開催国フランスの夢を打ち砕いた。
天真爛漫なキャラクターで、チームの活力ともなる。デクラークは今季も絶対に期待を裏切らない。
⑩クワッガ・スミス(南アフリカ/静岡ブルーレヴズ)
誰もが認める静岡ブルーレヴズの大黒柱だ。
東芝ブレイブルーパス東京のリーチ・マイケルは、「他チームから誰か一人選手を加えるなら誰がいいか」という質問にこの人の名を挙げた。その理由は強さ、速さ、タフさ。
南アフリカ代表のW杯連覇に貢献したタフガイは、元南アフリカ7人制代表のスピード、一瞬でボールを奪うジャッカル能力を持つ。何よりも80分間ファイトする敢闘精神が人並み外れている。
リーグワン発足後初の4強入りへ。キャプテンとして静岡を背負う、世界最高峰のバックローに注目しよう。
文:多羅正崇(スポーツライター)