リーグワン2024-25シーズンのプレーオフ準決勝が5月25日に行われ、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(レギュラーシーズン3位)が埼玉パナソニックワイルドナイツ(同2位)を28-24で下し、決勝進出を決めた。SH藤原忍が2トライの活躍でチームを牽引、終盤のスクラム戦でワイルドナイツを圧倒し勝利をつかんだ。
「Win The Moment」(一瞬一瞬で勝利する)をテーマに掲げたスピアーズは、試合開始からフィジカルバトルで優位に立った。190cm127kgの怪物PRオペティ・ヘル、2m超のLOルアン・ボタら巨漢FWが、ワイルドナイツの一次、二次攻撃を上体の力でねじ伏せる。攻撃力が持ち味のワイルドナイツを前半1トライに抑える守備を見せた。
攻撃面では日本代表SH藤原忍が躍動。10分、スクラムから相手FB山沢拓也のキックをチャージするスーパートライをあげると、32分にはゴール前のモールから抜け出したHOマルコム・マークスからパスを受けて2本目のトライ。
前半はスピアーズが22-10とリードして折り返した。
しかしワイルドナイツもこのままでは終わらない。BK陣が後半は積極的に仕掛けていく。
51分、WTB竹山晃暉が大外でボールを持つと思い切って裏にキック。バックスピンをかけたボールがすっぽり竹山の手に戻り追撃のトライ。さらに56分にはSO山沢京平が連続攻撃から巡目に呼び込み、藤原、立川を弾いて抜け出しグラウンディング。トライ後のゴールも決まり25-24と1点差まで詰め寄った。

巨漢FWたちの足がやや止まり気味なスピアーズに対し、ワイルドナイツが一段ギアを上げて攻め立てる。まるでファイナルのような息のつまる攻防が続いた。
「本当に最後の最後までわからなかった」(立川理道)流れが振り子のように揺れ動く中、勝敗を決定づけたのはスクラムだったか。
67分、ゴール前に迫ったワイルドナイツはスクラムでペナルティをとられ得点機会を逸する。そして75分、ハーフライン付近でのワイルドナイツボールのスクラム。海士広大、江良颯、為房慶次朗のフレッシュなスピアーズ一列が猛プッシュ。これをペナルティゴールにつなげて28-24と4点差のリードを奪い、そのまま逃げ切った。
勝利したスピアーズのルディケHCは「小さな勝利が大きなことにつながった」とテーマ通りの戦いができたことを評価。マキシ主将は、この試合2トライをあげプレイヤー・オブ・ザマッチに選ばれたSH藤原について「すごく成長している」と称えた。
一方、敗れたワイルドナイツのディーンズHCは自慢の攻撃力を出せなかったことについて「精度が足りなかった」「(BKが)保守的になっていた」とコメント。坂手主将は圧倒された終盤のスクラムについて「…難しかった」と悔しさをにじませた。終盤は自身はベンチに下がり、スクラムを早稲田大学のルーキー佐藤健次に託していた。自分が出ていれば、という複雑な胸中もそのコメントから感じられた。

スピアーズは決勝で東芝ブレイブルーパス東京と対戦する。
取材・文:竹林徹(リードラグビー)