ラグビー元日本代表であり、現在は解説者やTVコメンテーターとして活躍する廣瀬俊朗氏が、ワールドカップ開幕にあわせ『ラグビー質的観戦入門』を上梓した。4年前に刊行されたベストセラー『ラグビー知的観戦のすすめ』に続く第2弾。「今作ではラグビーの観方をより深堀りしています。合わせて読んでもらえたら」と廣瀬氏。
80分間のゲームを6分割せよ
本書では、ラグビーを面白く観るための視点が様々紹介されているが、刊行記念トークショーで廣瀬氏が触れたのが「試合を6分割する」という方法。
80分間というゲームを時間帯ごとに6分割すると、試合の流れが読めてくるという。それぞれどんな時間帯なのか、著書の記述をピックアップする。
「まず前半最初の3分の1は、両チームのその日の戦い方やコンディションを知るための時間帯」
『ラグビー質的観戦入門』
「次の20分間で、優勢なチームがその優位性を活かしてどう戦おうとするのか」
「ハーフタイムまでの残り3分の1では、次の二つのことを気にしながら試合を観ている。一つは、流れがこのまま続くのか。そして、もう一つは、劣勢のチームの誰かが大きく流れを変えるようなビックプレーをするのかーーこの二つだ」
「後半の最初の3分の1は、まさにリードされた側のそういう思惑(注:残り時間と点差から逆算した得点シミュレーション)が上手くいくのかがどうかがハッキリする時間帯となる」
「また次の3分の1では、メンバー交代が行われることが多く、どんな選手が登場して何が変わるのかを考えてみるのも楽しみの一つだ」
「終盤の3分の1は、チームとして勝ち慣れているか、それとも負けることが多くて勝利に慣れていないのか、といったクラブの文化までが見えてくる時間帯なのである」
また、これらの時間帯の区切りとなるキックオフの重要性を廣瀬氏は強調する。
「キックオフは回数が少なく、なんとなく見てる方もいるかもしれないですが、流れを変えるすごく大事なプレーです」
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ワールドカップ2023の楽しみ方
自国開催だった4年前のワールドカップでは実際にスタジアム観戦したファンも多かったが、今回はTV観戦がほとんどになる。どんな楽しみ方をすればいいだろうか。
「TVではガイドしてくれる解説者さんがいるので、まずそれを聞いて楽しむ。そしてSNSをしながら、あるいはこの本を辞書的に使いながら、楽しむこともできます。あとはパブとかに行ってみんなでワイワイ試合を観るのもいいですね」
4年ぶりにラグビー観戦するようなライトファンに、日本代表のスタイルがどう変わったのか、新顔は誰か、解説していただいた。
「ボールのつなぎなど、大きなスタイルは変わらないです。ただ、以前に比べてボールを保持するようになって、キックは少なくなっているかもしれない。選手の顔ぶれで言うと、4年前のメンバーから約半数が残っています。新しい選手で象徴的なのが、セミシ・マシレワとジョネ・ナイカブラというフィジー出身の両ウィングでしょうか。スピードがあり、4年前の福岡堅樹と松島幸太朗コンビとはまた違った魅力があります。フォワードでは、福井翔大選手。昨日のイタリア戦でも前半ジャッカルを決めるなど良いプレーをしていました」
イングランド倒したフィジーが面白い
また、ワールドカップ全体の見どころとしては、フィジーやサモアといったチームを注目として廣瀬氏はあげた。フィジーは直近のサマーネーションズシリーズでイングランドを初めて倒し、サモアは世界ランキング1位のアイルランドに肉薄した。代表資格に関するルール改正やスーパーラグビーでの経験値がこれらの国に追い風となっている。
一方、イングランドやオーストラリアといった伝統国は苦しんでいる。革新と伝統のせめぎあいも見どころになりそうだ。