10月26日、神奈川・日産スタジアムで行われた日本代表対ニュージーランド代表“オールブラックス”の一戦。試合中盤から日本代表はディフェンスが崩壊し、次々と黒いジャージーがインゴールに雪崩込んだ。終わって見れば10トライを献上。2年前の対戦では31-38と射程圏内に捕らえ、今試合へエディーHCは「歴史上初めてオールブラックスを倒すチームに」と意気込んでいたが、残念ながら世界の強豪の背中は一歩、二歩遠ざかってしまった。
試合の4分の1「第1クオーター」までは悪くなかった。両PRが140kgという超重量級フォワードのプッシュに対して、日本のスクラムはびくともせず。今体制で抜擢されたSH藤原忍も「超速ラグビー」を体現する素早い状況判断とクイックパスで2トライを演出した。
スタジアムがどよめくスーパープレイもあった。20分、自陣に攻め込まれるも、NO.8ファウルア・マキシが相手SOダミアン・マッケンジーにハードタックル。こぼれたボールをLOワーナー・ディアンズが敵陣に蹴り込み自らキャッチ、50m以上を走りきってインゴールへ。17-14と逆転に成功!したかに見えたが…TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)の結果、直前のタックルでマキシの手がボールに当たっておりノックオン、トライは取り消しになった。
仕切り直しで追いかける展開へ。ここから「感情面のコントロール」を失ってしまった日本。敵将も研究していたという外側のスペースを攻略され、その後の20分で5トライを奪われてしまう。最後尾を守るはずのFB矢崎由高の姿が見えないシーンも多かった。
後半に入っても、オールブラックスの勢いは止まらず、43分にSHキャム・ロイガードがさらに1トライを追加。時計の針が進み、戦前に「ここまで接戦に持ち込みたい」(エディーHC)と語っていた60分時点でスコアは12-50と勝負あり。
日本に光明がなかったわけではない。後半途中から投入された怪物PRオペティ・ヘルだ。193cm127kgという体躯に走力もある。68分、密集からのこぼれ球をひろうとそのままスルスルと抜け出し、最後はPRとは思えぬステップでマッケンジーのタックルをかわしトライ。この日が代表初キャップ、衝撃のデビュー戦となった。
しかし、その後オールブラックスもBKルーベン・ラヴが2トライをあげ、19-64というスコアで試合終了となった。
エディー新体制になってからの日本代表は「超速ラグビー」を掲げ、アップテンポな攻撃を志向する。ここまでのテストマッチ8試合で平均30得点とアタック面は悪くない。ただ、その代償に徐々に足が止まり失点を重ねるパターンが見られる。エディーHCは「今は超速ラグビーを極端にさせている段階」と言うが、来月のフランス、イングランドとの戦いで同じような負けパターンを見せれば、ファンも離れていってしまうだろう。目指すスタイルは伝わってくるが、キックも交えてじっくり勝負どころを探す「勝つラグビー」をそろそろ見たいのが本音だ。
取材・文:竹林徹(リードラグビー)